バカとテストと催眠術～カラオケの罠、ムッツリーニの危機～

２１日目ＰＭ０：２７　駅前カラオケ店　９１３号室

カラオケにやってきた三人は、それぞれ座って選曲をしていた。

「今日は何から歌おうかの」

「この曲なんてどうです？」

姫路が手慣れた手付きで選曲し、秀吉がそれを歌う。
一曲目の終わりが近づいたころ、個室の扉が開き店員がドリンクを持ってきた。

「失礼致しまーす。こちら御注文のソフトドリンクですー」

「ごゆっくりどうぞー」

飲み物がテーブルに置かれると、歌い終わった秀吉もマイクを置く。
そしてムッツリーニを挟んで反対側にいる姫路に目線を送ってタイミングを計る。

「……」

「……」

ムッツリーニが曲を悩んでいる今がチャンスだと、さっそく行動することに。
最初に動いたのは姫路だ。

「ちょっと暑いですね。エアコンのスイッチは……あっ！？」

「！？」

濡れているわけでもない普通の床で、姫路は突然転んでしまう。
体をムッツリーニに向けた状態で尻もちをつき、その拍子でスカートがめくれる。

当然ムッツリーニはそれを正面から目撃してしまい、スカートの下でモロに見えるパンツを脳に焼き付けるとともに大量の鼻血を噴出した。

「ブッーーー！！」

ムッツリーニがいつも通り輸血を始めた瞬間を逃さず今度は秀吉が動く。
バレないように粉状の薬をドリンクに混入しかき混ぜると、何食わぬ顔でムッツリーニの体を支える。

「大丈夫かムッツリーニ」

「うぐ……輸血パックを持ってきて正解だった……」

「ご、ごめんなさいっ」

輸血を終えたムッツリーニは、気を取り直して曲を入れ、歌の前にドリンクを飲んだ。
喉が渇いていたのか、思いのほかゴクゴクとグラスの３分の１くらいの量を飲むと、そのまま歌い始める。

その様子を残りの二人は笑顔で見ていた。

(……まずは第1段階達成じゃな)

姫路(あの量だと効き目が現れるまで３０分くらいですね……)

ムッツリーニは自分が薬を盛られたことに気付かないまま、カラオケを楽しむのだった。


つづく