[アンケート企画⑧]望まぬ覇王、操られた曹操~華淋、終わりの始まり~
恋姫†無双 - 2014年11月02日 (日)

魏の覇王、曹操(真名:華琳)は疲労が溜まっていた。
思った以上に諸葛孔明は手強い。
数度に渡る激戦に戦力の低下は著しく、これ以上攻勢を取ることが困難の状況に今日、曹操は撤退を決意。
部下達に退却準備を取らせ、責任を取らせるため今回の攻略作戦を提案した崔凌(さいりょう)という男を呼び出した。


呼び出した曹操はひどく立腹しているようだ。
その理由は当然、失敗を招いた崔凌に怒りを抱いているからだ。


弁解する間もなく華琳は話を断ち、容赦の無い言葉を浴びせかける。
まるでゴミを見るかのように蔑んだ目で、崔凌の言葉にまるで耳をかさない。



結局、崔凌はこのまま魏を去ることになった。
責任を取るための自害を要求したり、この場で首を刎ねようとしないのは側近である秋蘭(夏侯淵)の推薦だったからに違いない。
ともあれ命だけは助かった崔凌は素直に目の前を去る。次に曹操が取り立てるのは荀彧であった。


その日は遅くまで指示を出した華琳も睡眠を取ろうと寝屋へ向かう。
その途中で春蘭が華琳を呼び止める。





不器用ながら自分の為に蝋燭を持ってきた春蘭の好意に、撤退の苛立ちも少し和らいだ気がした。
崔凌を推した秋蘭には何かしら罰を与えなければいけないが、姉である春蘭に免じて軽くしても良いと華琳は思った。
寝屋に入った華琳はさっそく蝋燭に火をつける。
小さめの炎に苺の様な甘い香りと、薄紫の煙がわずかにたち、華琳はそれを気に入った。
汗を拭いたり就寝前の準備を始めて5分ほどで強烈な睡魔が華琳を襲う。

普段誰にも見せないような大きい欠伸をしたと共に、寝具に体を預けたところで華琳は意識を失うように眠りについた。
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目を覚ますと野に放ったはずの崔凌が目の前にいる。
そして自分の両腕は頭上で手首を固定され、鎖で寝屋の柱につながれていて身動きが出来ない。
聡明な華琳もこの状況をすぐに理解することができなかった。


この場で慌てて取り乱すことをしないのは華琳が曹操たる所以の1つ。
少なくとも下手に刺激すれば命を奪われかねない状況に落ち着いて必要最低限の言葉で、かつ時間を稼ぐことのできる質問を投げかける。
高い柵で囲まれた敷地内に見回りの兵が常時5人はいる。寝屋は拠点の入り口から最奥にあり、侵入するのは不可能に近い。



崔凌が復讐に来たことは間違いない。しかし少なくとも手に刃物のような凶器は持っておらず、懐に忍ばせているにしてもすぐに殺すようなことはしないという雰囲気を察知し、逆に挑発し返せば大声をあげて怒るかもしれない。そうすれば見回りや隣の寝屋にいる春蘭と秋蘭が気付くかもしれない。そこに助かる可能性を華琳は既に見出していた。




崔凌を睨む眼光は鋭く、それは決して常人には備えることのできない迫力も伴っていた。
一瞬気圧されたところを見逃さずさらに煽り、責め立て、自分が不利な立場にあると崔凌に錯覚させるほど勢いがあった。
黙って聞くだけの崔凌をこのまま責め続ければもしかしたら逃げるかもしれないと思ったが、同時にある事実に気付いてしまう。
これだけ激しく声を発しているのにも関わらず、見回りはおろか隣の寝屋にいるはずの春蘭も秋蘭もやってこないのだ。
その異変に気付いた時、華琳の言葉は止まる。そして今度は崔凌が口を開いた。


ここにきて本当の意味で華琳は焦りを感じた。
配下の者の死が頭を過る。春蘭達すらも殺されてしまったのか。
それが崔凌にできるとは思えないが、現にこうして自分は拘束され誰もやってこない状況は確実に何らかの事態の発生を物語っている。






崔凌の呼びかけで入ってきた二人の人物に驚きを隠せない。
その2人とは華琳が最も信頼する春蘭と秋蘭だったからだ。




二人は全く反応せず、崔凌の脇で直立している。
その瞳は濁っていて、いつもの輝きが無い。その異常さに華琳もすぐに気が付いた。





二人は操られているのは間違いない。
と言うことは今自分が置かれている立場はひどく危険な状態ということになる。
華琳は絶句しながらも考えをめぐらせ、すぐに次の行動をとった。

呼びかける華琳に対し春蘭は沈黙していたが、秋蘭が口を開く







華琳はこれだけでほとんどを察した。
なんらかの方法で秋蘭を操り、利用して自分を推薦させることで魏の軍師に崔凌はなった。
一度は曹操として自分の器を認めて下についたが失敗によって斬り捨てられたことで逆恨みし、今度は春蘭をも毒牙にかけて復讐にやってきたのだ。
そしてその目的は命を奪うことではなく、恐らく二人と同じように自らの傀儡とすること―――
看破した事実を口にすると崔凌は笑いながら腰を落して華琳の顎を掴んだ。



顔が近付いたところに華琳が唾を吐く。
崔凌は黙って立ち上がると華琳を見下ろして素直に怒りの表情を向けた。



華琳は言葉尻に舌を噛んで自害しようとした。
しかし―――

自害の気を察した秋蘭が即座に手刀で華淋の首を叩き、舌を噛む前に華琳は気絶させられてしまう。
鎖で手を繋がれていた華琳は力の抜けた人形の様にぶら下がる態勢になった。


華琳の自害を止めたのは秋蘭だった。
手刀一発で気を失ってしまった華淋に、崔凌は改めて傀儡としての洗脳を施す。






春蘭の洗脳を秋蘭に任せると、崔凌は懐から怪しげな薬を取り出した。
それはどんなに強靭な精神を持つ者の心をもふやかし、言われたことをそのまま心に刻み込んでしまう禁忌の薬。
崔凌は華琳の意識が回復するのを待ってそれを無理矢理飲ませた。
そして翌日―――





食い下がられた華淋は表情を怖めて説き伏せる



真名を呼ばれないことで華琳の怒りを感じた桂花は反論せずに受け入れざる負えなかった。
この二日後、魏の軍は撤退し、都への帰路を取った。
~歪められた華琳の日常~へ続く
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