[アンケート企画⑯]歪められる恋愛観、織斑千冬
IS 〈インフィニット・ストラトス〉 - 2015年12月07日 (月)
IS学園に新しく男性教師が赴任してきた。
男の名前は句折賀 蓮(くおりが れん)
28歳で、前職や経歴は不明だ。
ISの適性も無く、教師と言ってもその担当するところは一般教養であり、主に数学や化学だ。
新任にもかかわらず、学園理事のお墨付きで主任の肩書を得ている。
それだけなら良かったのだが、彼はいろんな部署に首を突っ込んでは、口を出すので、現職の教師達からの煙たがられていた。
特に反発を態度に出したのは、織斑千冬だった。
ISにも乗れない男に、指導方針に口を出されるのは彼女にとっては屈辱だったし、その内容も的外れだったからだ。
今日もまた、廊下で二人は口論となっていた。
「お言葉ですが句折賀先生。その様なカリキュラムを取り入れるのは容認しかねますが」
「まぁそう邪険にしないでさ。私は私なりに考えて……」
そんな言葉にもまるで取合わず、千冬は鋭い眼光で拒絶の言葉を投げつける
「ISの適性の無い人間に、訓練方法に口を出す資格は無いと言っているのです。……わかりませんか?」
「うっ……。わ、わかりました。織斑先生の言う通りですね」
このように、千冬はISの訓練内容への口出しには特に怒る。
まるで隠そうともしない露骨な圧力に、蓮も引き下がらざるを得ない。
「また喧嘩されたんですか?」
千冬が去った後でため息を付いていると、廊下を通りかかった山田が声を掛けてきた。
「いや喧嘩ってことは……」
千冬のキツイ態度は男に対して共通のものなのかとも思ったが、山田曰くどうやら弟にはだいぶ甘い様だ。
しかし、これまで何度か廊下から授業風景を覗いたことがあるが、とてもそうは思えない。
千冬は、弟である一夏に対しても厳しく接しているのは明らかだったからだ。
それでも山田は良く見てるとわかると言うので、少し長い時間足を止めて授業を見ていると、確かに違いがわかった。
確かに叱りはするが、その後の表情は穏やかで、自分に向けられるような怒気はまったく感じられない。
「どうでした?」
「確かに弟に対しては甘い感じだった……」
「私が思うに、織斑先生の一夏くんに対する感情は、それ以上に思えます」
「それ以上?」
「うーん、言葉での説明は難しいんですけど、なんというか……一人の異性として意識しているように思います」
「なるほど……そういうことか」
それでピンと来た蓮は、薄ら笑いを浮かべて山田に命令した。
「面白いことを思いついた。彼女を例の部屋に呼び出せ。弟の方は私が呼び出そう」
「御主人様の仰せのままに……
」
―――
―――
「なんだ、織斑もきていたのか」
「句折賀先生に呼び出されたんだ」
「句折賀先生に?」
二人は学園にいくつかある機材保管庫のうちの1つに呼び出されていた。
この部屋は今現在はあまり物がおかれていないが、損傷した機材などを置くこともあるので、かなり分厚い壁で囲まれている。
呼び出された経緯もあり、千冬は何か嫌な物を感じたが、それを察したところで既に手遅れだった。
「こ、これは!?」
突如として部屋に噴き出してきたガスは、即効性の睡眠ガスであり、それを吸った二人は昏 睡してしまう。
二人が眠った後、部屋に現れたのは当然のごとく蓮と山田だった。
昏 睡状態の二人は別室へと移され、そこにある椅子に座らされる。
そして四肢を拘束された上で、バイザー付のヘッドギアを被らせられている。
脳に刺激を与えて、人格を書き換えてしまう洗脳装置だ。
後はスイッチを入れれば織斑姉弟は洗脳装置の意のままである。
「洗脳内容はどのようにされるのですか」
「織斑先生にはこれから私と接する度に嫌悪感を抱くようにインプットする。徹底的に嫌われるつもりだ」
「嫌われる……ですか?」
「あぁ。そして弟に対してはこれまで以上に愛情を感じさせるつもりだ。何をしても愛おしく思い、どんどん好きにさせる。それだけじゃない、彼女の恋愛理念を書き換え、愛する男へはとにかく従順に尽くすという性質にする。それこそ好きな男の言葉ならどんなことでもいいなりになるほどにな」
「ふふっ、御主人様の考えがわかってきました。一夏くんには天国と地獄を味わってもらうことになりそうですね……
」
「その通りだ。もちろんそれまでの期間も違う方向で楽しませてもらうがな」
こうして洗脳装置によって織斑姉弟は脳を書き換えられた。
これまでと変わらないIS学園の日常。しかし二人には大きな変化が起きていた。
千冬の一夏への態度は明らかに軟化し、目に見えて優しくなった。
誰が見ても異性と意識しているとわかるくらい、露骨な変化だ。
一夏の方も、姉である千冬を意識しているそぶりを見せている。
逆に蓮に対してはこれまで以上に態度が冷たくなり、高圧的な態度をとるようになった。
肩書上は上司ある蓮を、まるでゴミを見るかのような目で見る。
そんなある日、蓮は千冬の部屋に呼び出されていた。
呼び出された蓮は床に正座させられ、千冬は椅子に座って足を組んで見下ろしている。
「今日呼び出された理由はわかっているでしょう?」
「いや全然……。部下である織斑先生の前で正座させられる心当たりなんて私にはありませんね」
「……これだからあなたという人は。いいですか!今日はあなたの教育方針は間違っていると教える為に呼び出したのです」
「そうですか。時に織斑先生、胸を晒して恥ずかしくは無いんですか?」
「は?上司に対して説教をする時は胸をさらけ出すのは当然でしょう?IS学園の主任教師ともあろうに、そんなことも知らないのですかっ」
彼女はいたって真面目に言うが、その常識が洗脳装置で植え付けられたものだとはまるで思っていない。
蓮はニヤつきそうになるのを必死にこらえ話を聞いていくと、生徒の気持ちを考えた教育が必要ということを言いたいようだ。
「生徒の気持ちを考えろと言いますけど、織斑先生自身も今は教師の身分じゃないですか。本当に生徒の気持ちを理解できているんですか?」
「そ、それは……もちろんです」
ちょっと屁理屈を言われただけで言葉に詰まるのは、彼女の思考が正常じゃないからに他ならないが、
千冬は至極まっとうな正論をぶつけられたと感じてしまっている。
「しかしまぁ、織斑先生の仰りたいことは理解できました。生徒の気持ちを理解する……大切なことですね。良いでしょう、では特別に今から日付が変わるまで織斑先生を私の生徒にしてあげましょう」
「私が句折賀先生の生徒?」
「そうです。短い時間でも私の生徒になれば気持ちも理解できるでしょう」
千冬は嫌悪している蓮の生徒になるのはとても嫌だったが、言われたことに対し反論することがまったくできずに渋々それを了承してしまう。
こうして日付が変わるまでという約束で、千冬は蓮の生徒となった。
「それでは織斑、制服に着替えたら私の部屋に来なさい」
「……ッ。わかりました……句折賀先生」
―――
10分後、蓮の部屋をノックしたのは千冬だった。
IS学園の制服を着ている彼女は、いつもの凛々しさが抜けてかなり若く見えた。
「私の部屋から誰にも見つからずにここまで来るのは大変だったんですよ」
「そうか。それはスマンな。では時間も限られていることだし、さっそくお前に教育をしてやろう」
「……何をするんですか」
「今日お前に教えるのは、性についてだ。いわゆる性教育をお前に施してやろう」
それには千冬も激しい嫌悪感と反抗心を見せたが、教師には絶対服従という思考が働き、結局それを受け入れてしまう。
「まずは織斑の性知識を確認する必要がある。思いつくところで良いから、知っている限りの知識を言ってみなさい」
千冬は顔を真っ赤にしながら知っている性知識を言葉にしていくが、本人の恥ずかしがりように対し、その内容はいたって普通だった。
普通すぎてつまらないので、蓮は途中で割って入りオナニーを普段どのようにしているかの質問に切り替えた。
すると今度は予想以上に興味深い内容のを話しを聞くことができた。
「オナニーの仕方もいたって普通だな。ちなみにどういったモノをオカズにしているんだ?」
「そ、そんなことまで答えなければならないのですか!?」
「性教育をするのには知る必要があるだろう。織斑ならそれくらいわかってくれると思ったが」
「それは……その通りです」
「わかってくれればいい。では答えてくれるね」
数秒の沈黙の後、諦めの表情を見せてから千冬はオカズについて語り始める。
「最近は……弟の一夏の事を思いながら……オナニーしています」
「ほう!織斑はよりにもよって実の弟をオカズにしてるのかっ」
一夏に対する好意を増幅するように洗脳しはしたが、まさかこれほど短期間で実の弟をオカズにするようになるとは思っていなかったので、蓮にとっても驚きだった。
(想像以上のペースで愛情が膨らんでいるな……。ちょっと調整しておくか)
「織斑が弟をオカズにオナニーをする変態だということは良くわかった。だが―――」
「私は変態などでは……!」
「いいから聞きなさい。変態なのはわかった。だが―――安心しなさい。変態を普通に矯正するのも教師の役割。今日の性教育はオナニーについてにすることにしよう」
「オナニーについて……」
蓮はまず、オナニーの仕方としてクリトリスを重点的に弄るように説明した。
これは彼女のクリトリスを開発する手間を省くためで、敏感に育てすぐイケるようにするのが目的だった。
もちろん、いずれ蓮が千冬を抱くときに激しくイカせるのにも役に立つ。
さらに指導はオカズの内容にも及んだ。
「一夏に見られながら句折賀先生に犯されるところを想像……ですか」
「そう。弟に抱かれる想像でオナニーするのは健全じゃない。しかしそれほど好意を寄せている弟を完全に除外するのも、精神衛生上よくない」
「だから今後は私に犯されるところを想像してオナニーしなさい」
「……わかりました」
返事こそ素直にするものの、やはりその表情は納得がいかないようだ。
そこでもうひと押し説明を付け加える。
「女は男に屈服することで真の快楽を得られるんだ。服従し、尽くすことでしか幸せを得られない。君もそうだ」
「服従し。尽くすことでしか幸せを得られない……」
(悔しいがその通りかもしれない……今まで気付かなかったが、この人の言うことは真実に思える。これほど嫌っている男の言葉なのに心に染み込むようだ)
既に洗脳済みの千冬は様々な書き換えをされているが、蓮に対しては主に接すれば接するほど嫌悪感が増幅されるようにされた。
もちろん危害を加えることは無いように制御を施されているが、それに加えてどんなに嫌悪感が募っても、蓮の言葉を受け入れる様にされてしまっている。
恋愛観も男に尽くすように変更されているが、それに加えて服従によってでしか真の幸せを得られないようになってしまった。
当然このまま彼女への指導が終わりになるはずも無く、実践に移ることになった。
「私の言った通りの想像をしながら全力で取り組むこと。そして絶頂する時は迷わずイクと言う事。いいね」
「わかりました」
スカートとパンツを脱がせ、ベッドの上で開脚させると既に若干濡れていた。
多分、蓮を呼び出す前に一夏と接しているときに濡れたままだったのだろう。
「ん……ぁ……ああんっ……」
指導内容にそって、これまでのやり方からクリトリス主体のオナニーを実践する。
まだ開発されていないこともあって、快感を得てはいるものの絶頂するほどではないようだ。
(あぁ……やめれくれ句折賀先生……私の処女が……一夏に捧げたかった処女が奪われる……)
「くぅ……んあっ、ああっ」
蓮に犯されるという想像をしながら、熱心にクリトリスを弄り続けると気持ちも高ぶってきたのか、声を多く漏らすようになった。
「あああっ、ダメッ……!あああんっ、イ、イクッ、イクゥウウウ~~~~!!」
ビクンビクンと絶頂で痙攣する千冬は、それまで見たことのないくらい溶けきった表情をしていた。
「良し。ちゃんとイケたようだな。今後も今日の指導内容に基づいてオナニーに励むことだな」
「はぁはぁ……わかりました……句折賀先生……」
「よろしい!これにて今日の臨時教育を終了とする。服装を整えた後、自室に戻って良し」
「はい……御指導いただき……ありがとうございました……」
それからというもの、千冬は指導内容の通りオナニーするようになった。
(いちかぁ……今日はお前の前で犯されて……中出し受精させられちゃったよぉ……
)
回数を重ねる毎にどんどん千冬の想像はエスカレートしていき、最近では一夏の前で犯されたあげくアヘ顔をさらして屈服してしまうなんてことまで考えていた。
そんな生活が続いた2週間後、千冬は5連休の前半を利用して一夏と海に面した旅館に一泊二日の旅行に来ていた。
もちろん箒やセシリア達もついて来たが、千冬は一夏のことしか頭になかった。
「どうだ?」
「どうって?」
「私の水着はどうかと聞いているんだ!」
「お、お前がこういう水着が好きだと言うからわざわざ買ってきたんだ。感想くらい言うのが礼儀だぞ」
「ごめんごめん。とっても似合ってるよ。その……綺麗だ」
「そ、そうか……
」
この段階では相当に愛情が膨らんでいるので、もはや一夏に対する恋愛感情を隠そうともしない。
宿泊先の部屋割にしても、立場を利用した強権を発動して一夏との相部屋を手にするなど、やり過ぎなところもあるくらいだ。
そんな姉の変化に鈍感な一夏も気付いていた。
最近は頼めば断られないし、前だったら絶対断られるような雑用でも引き受けてくれる。
厳しかった指導も甘くなっている。
それを肌で感じていた。
それを除いても、雰囲気そのものもまるで変わっていた。
―――
「いやぁ~、弟と飲む酒は美味いっ」
「千冬姉、あんまり飲みすぎると二日酔いになるぞ」
「私はこの程度で潰れたりはしない。ホラ、お前も飲め飲め
」
酒が入ったことでさらに気を良くしている姿を見て、一夏はちょっと冗談染みたことを言ってみることにした。
本来の一夏なら冗談でも絶対に言わないようなことをだ。
「千冬姉、ちょっとお願いなんだけど……俺の足を舐めてくれない?」
「なっ!?」
動揺する千冬に冗談だと取り繕うとしたが、数秒の沈黙の後に千冬は無言で立上り一夏の傍へと寄った。
怒られると思ったが、彼女は膝をついて土下座の態勢を取り、そして一夏の足の指を舐めはじめた。
「ぺろぺろっ……
」
「千冬姉……!」
指を舐める千冬は、自分の中で湧き上がる感情に戸惑いと喜びを感じていた。
(あぁ、句折賀先生の言った通りだ。一夏に服従し、尽くすのがこれほど幸せだなんて……あぁ、私はもう逆らえない……愛する人……一夏に……)
目の前であの千冬が自分の足を舐めている。
その光景に一夏も興奮して勃起していた。
彼もまた冷静な判断力を失い、さらに過激な要求をしてしまう。
「俺とセックスしてくれって言ったら……千冬姉はどうする?」
「!!」
お前が望むなら仕方ないと言葉は嫌そうだが満面の笑みで体を開こうとする千冬。
本当にことに及びそうだったので冗談冗談と取り繕うと、露骨に残念そうだ。
(私は構わないのに……同室では火照りを解消することもできないし……困った)
そう思う千冬をよそに、一夏は別の事を考えていた。
(なんていうか完全に俺にベタ惚れって感じだな。もう何を言っても俺の命令通りに……命令通りに……)
そう確信したとき、一夏の思考に変化が置き、千冬に言う。
「ちょっと散歩してきなよ。酔いが醒めたら戻ってきて」
「あ、あぁそうだな。そうするよ……」
散歩に出た千冬はやり過ぎたかと反省し、部屋に戻ったら謝ろうと思った。
1時間ほど歩くと酔いが醒めてきたので部屋に戻ったが、待っていた一夏はどこか虚ろな目をしていた。
「一夏、さっきはその……」
謝ろうとした矢先、一夏は被せる様に言葉を放った。
「ネコ耳コンニャク」
「――――!」
それを聞いた千冬は瞬く間に目の光を失い、催眠状態に陥ってしまった。
「千冬姉、あなたは私の質問にはなんでも正直に答えます。いいですね」
「はい……一夏の質問には……なんでも正直に答えます……」
一夏は自分に対して千冬がどんな感情を抱いているかを質問した。
すると予想通りこれ以上ないほどに大きな愛情を抱いることがわかった。
「一夏の為なら……一夏の言う事ならなんでも聞いてあげたい……従いたい……愛しているから……」
「わかりました。ではもう1つ質問します。あなたは句折賀蓮先生のことをどう思っていますか」
「句折賀先生……」
この質問に対しても予想通りの答えだった。
激しい嫌悪感を抱き、見た目から話し方を含めたあらゆる振る舞い、服装や歩き方など何から何まで嫌っていた。
彼の何が嫌いというより、彼だから全てが嫌い―――
それは視界に入っただけで苛立ちが込み上げるほどマイナスの感情だった。
「わかりました」
実の弟である一夏への大きな愛、
上司である蓮への憎悪
それを細かく聞き出した一夏は、催眠状態の千冬に暗示を与えた。
「あなたは私が3つ数えて手を叩くと、催眠状態から目を覚ますことができます」
「目が覚めたら、明日の準備を整えて就寝します」
「そして朝起きると、あなたが織斑一夏に抱いている感情と、句折賀先生に抱いている感情がそっくりそのまま入れ替わっています」
「朝起きると……一夏への感情と……句折賀先生への感情……入れ替わって……」
その暗示をかけたとき、千冬は虚ろな瞳のまま悲しそうな表情になった。
一夏への愛情が憎い男と入れ替わってしまうことを本能的に拒絶していたのだろう。
だがそれはつまり彼女が暗示の内容をちゃんと理解していることの証明に他ならなかった。
「必ずそうなります。あなたへの暗示はこれで終わりです。3……2……1……」
パンッ
「―――ん?」
手を叩いたことで千冬は催眠状態から目を覚ました。
同時に一夏の瞳にも光が戻り、本来の彼に戻っていた。
「今日は一夏との時間を作れて楽しかったよ。明日の準備をして、今日はもう寝ようか」
「まだ10時だよ。それにこの後セシリアの部屋にみんなで集まる予定なんだ、千冬姉も来るって言ってたじゃないか」
「それは……そのつもりだったがなんとなく今日はもう寝た方が良い気がするんだ。悪いが一夏だけで行ってくれ」
「そっか。じゃあみんなには千冬姉は酔いつぶれたって言っておくよ」
「もうちょっと気の利いた言い回しがあるだろうっ」
「はははっ。じゃあ行ってくる、おやすみ。千冬姉」
「あんまり夜更かししすぎるなよ。……おやすみ
」
千冬はとても穏やかで優しく、愛情に満ちた笑顔で一夏を見送る。
それは千冬から一夏に向けられる最後の笑顔だった―――
―――翌日
「織斑、飲み物を買ってこい。全員分だ」
「ええっ、またかよ。大体俺1人じゃ持ちきれないよ」
「うるさい、つべこべ言わずに行って来い!」
「わ、わかったよ」
朝、目を覚ました千冬にはさっそく変化が置きていた。
昨晩まであれほど愛情に満ちた態度をとっていたのにもかかわらず、途端に厳しくあたるようになったのだ。
まるで一夏を視界に入れたくないかのような態度で、ことあるごとに一夏を遠ざけようとする。
一夏もこの変化には戸惑うしかなかった。
旅行2日目の午前中は、みんなでビーチバレーをすることになった。
「えーと次は、私と一夏さんチームと織斑先生&篠ノ之さんチームの対戦ですわね」
「頼むぞセシリア」
「頑張りましょうね、一夏さんっ
」
「それじゃあ対戦を始めるよっ。まずは織斑先生チームのサーブからね」
「あぁ、わかった。―――はああああああっ!」
「えっ――――」
千冬渾身のサーブが一夏を襲い、頭部を直撃した。
その衝撃で一夏はしばらく気を失ってしまうほどだった。
こうした事件もあり、この旅行は微妙な空気のまま終わりをつげることになった。
千冬の態度には、箒をはじめとする生徒たちも動揺せざる負えなかった。
一夏は連休の後半に自宅に戻って休んでいた。
すると最終日に千冬がやってきた。
自分の私物を回収しにきたという彼女はやはり別人のように冷たい空気を纏っていた。
「お前の目につくところに私物を置いておきたくないんでな。残りの物は全て処分しておけ、お前に触られた物などもはや不要だ」
「千冬姉……」
わずか数分で必要な物だけを手に取り、辛辣な言葉を残して彼女は去って行った。
取り残された一夏は、何が原因で態度が急変したのか全く心当たりがなかったこともあり、どうすることもできなかった。
連休が終わり、学園に戻っても千冬はそのままだった。
いやむしろ悪化しているとさえ思えた。
「織斑、お前にはこの本を全て覚えておくように言ったはずだが……?」
「そ、そんなこと言ったって1日じゃいくらなんでも無理……」
「言い訳はいい!」
「いいか皆よく聞け。本来なら入学前に全て覚えておかなくてはならないことをこの男はいまだに覚えていない。このようなクズと一緒になりたくなかったら与えられたカリキュラムは滞りなく遂行することだ!」
授業でも一夏を激しく叱り、さらし者にして怒鳴るようになったのだ。
どうにかして変化の理由を聞き出そうと接触を試みても、千冬が取合わないのでどうすることもできない。
ただうな垂れることしかできなかった。
そんな落ち込んでいるところを、励ましたのはセシリアだった。
「わ、私でしたら一夏さんを励ましてさしあげてもよくってよ。私に出来ることでしたらなんでもしてさしあげますわ」
気遣うセシリアに対して一夏が返した言葉は、およそ変態的な内容だった。
「……じゃあ俺の尻の穴を舐めてって言ったらしてくれるの?」
「!?」
「……一夏さんがそう命じられるのでしたら」
「セシリア……俺のことをそこまで……」
「犬の尻尾が付いた炊飯ジャー」
「え――――」
一夏に対して態度を急変させた千冬は、一方で蓮に対しての態度も変化していた。
近寄ることすら避けていた蓮のデスクに来たと思ったら、なんとコーヒーを差し出したのだ。
「これは?」
「コーヒーです。その……喉が渇いているかと思いまして」
「……ありがとう。織斑先生は気が利くんですね」
「えっ、あっ、ええと……べ、別に普通のことをしたまでです」
お礼を言われて顔を真っ赤にする千冬はとても嬉しそうだった。
主任室は個室なので他に誰もいないが、もし他の教師がその光景を見たなら驚いたことだろう。
ともかく一夏と自分への感情が入れ替わったことは明らかだった。
そんな千冬にいじわるをして見たくなった蓮は、彼女の持ってきたコーヒーには手をつけなかった。
「気持ちはありがたいんですが、今はお茶を飲みたい気分なんです。廊下の自販機で買ってきてもらえませんか?」
「えっ、も、申し訳ありませんっ。お茶ですね、買ってきます」
差し入れたコーヒーを気分じゃないからと手を付けず、あまつさえ持ってきた本人にお茶を買いに行かせるなど失礼極まりない話だ。
怒るべきところなのだが、千冬はむしろそれを察することができなかったことを反省していた。
「お金はあげなくてもいいよね?お茶も千冬先生のおごりってことで」
さらには奢れなどと失礼な言動を被せる。
それでも千冬は怒ることは無かった。
「え?あ、はい。お金はいらない……いりません」
彼女にとってこの言葉は、怒るよりもむしろ喜ぶ要素が多かったからだ。
「このお茶だな」
自販機でお茶を買いつつ、さっき言われた言葉に笑みを浮かべていた。
(千冬先生のおごり―――千冬先生―――千冬……)
「ふふっ
」
名字ではなく下の名前で呼ばれたことに喜んでいたのだ。
もっと言えば、150円のお茶と言えどもそれを貢ぐ形になるのも嬉しかった。
タメ口を使われたことにしても、違和感どころか親近感を感じていたので、まるで怒る要素にならなかったのだ。
意気揚々とお茶を持って蓮の部屋に行くと、千冬にとって予想外の誘いが待っていた。
「ところで千冬先生。明後日の土曜日、二人でビーチにデートね♪」
「ええっ!?わ、私と句折賀先生で……ですか?」
「そうそう。ちょうど土曜は俺も休み取れそうだからさ」
嬉しい誘いにまたも顔を真っ赤にして狼狽える。
今まであれだけ邪険にしてきた自分のことをデートに誘うなんてどういうつもりなんだろう―――
ひょっとして好意を持ってくれているのか、など色々な思考がよぎっていた。
いずれにせよデート自体は千冬も行きたいと思ったが、土曜日は先約が入ってしまっていた。
それもとても重要な用事で、よほどのことでなければキャンセルするわけにはいかない。
「その、とても嬉しいお誘いですが……あいにく土曜日は予定が……」
とても申し訳なさそうに断ろうとしたが、言い終える前に蓮が言葉を被せてきた。
「俺の誘いを断るの?」
「……!!」
蓮の表情は笑顔だが言葉は重く、千冬の全身を貫く様に響いた。
(私の予定なんていっさい無視しする強引さ……逆らえない……違うな。この人には逆らいたくない……私の魂がそう言っている。あぁ、私は……
)
「……わかりました。私で良ければデートに付きあわせて頂きます
」
こうして大切な用事があるにもかかわらず、デートを承諾してしまったのだった。
千冬が部屋を出ていこうとした時、蓮が呼びとめる。
「あぁそれと、俺は水着は卑猥なのが好きなんだよね」
「え?」
「二度は言なわないよ。それじゃあ明後日を楽しみにしてるね」
「卑猥な……水着……」
(この私に卑猥な水着を……あぁ……
)
言葉の意味を理解した千冬は、その日のうちに水着を買いに行くのだった。
そして土曜日―――
「ど、どうでしょうか」
「おー!見えそうで見えない乳首、布面積に対してちゃんと処理された陰毛。いい感じに卑猥だね。いいねいいね!」
「あ、ありがとうございますっ
」
親子連れを含むたくさんの人でにぎわう海水浴場で、布面積の少ない彼女の水着は場違いといえるものだった。
どんな水着を買うかは相当悩んだようで、色も黒と紫を二着買い結局こっちを着ることにしたらしい。
悩んで買った水着を褒められて、かなり喜んでいた。
「せっかくのデートだし、お前って呼んでいい?」
「んなっ!?そ、その、構いませんが……」
「カップル感が出ていいでしょ♪お前も俺のことは蓮様って呼んでよ」
「さ、様ですかっ」
「いいじゃない。今時珍しい男尊女卑カップルって設定でさ
」
ウインクをしながらそう言われては、千冬に拒否する感情など湧きはしなかった。
「わかりました。蓮様……
」
(あぁ……蓮様……なんてしっくりくる呼び方なんだ。今日だけじゃなく、これからもずっとそう呼びたいくらいだ
)
ここまで来ると、もう千冬はいいなりだった。
海に入り、頭から下が見えなくなったところで体を弄ってもなされるがままだった。
水着をずらして直接胸を揉んだりしても、抵抗するそぶりすら見せず、体を委ねてくる。
それでも岩陰に隠れて裸にし、フェラチオをさせようとするとさすがに抵抗があったようだ。
付き合ってもいないのに性行為は、と反抗したのだ。
だがそんな抵抗も一瞬でしかなかった。
「付き合ってなくちゃフェラしちゃいけないってルールでもあるの?ま、お前が嫌だっていうんなら別にしなくてもいいけど」
突き放すそぶりを見せると、すぐに言葉を撤回してフェラチオを受け入れたのだ。
「い、いえっ。フェラチオします……」
「します?」
「……!さ、させてください。蓮様のオチンチンに、私のお口で御奉仕させてください……」
「そうそう。男尊女卑カップルなんだから俺の言うことはなんでも従わなくちゃね」
「わひゃりまひた……
」
千冬はこうして服従し奉仕することへの喜びと、尽くすことで得られる幸福感に酔いしれていた。
そして口内射精され、命令通り飲みこんだとき、蓮を愛していると完全に自覚したのだった。
月曜日になり、学園で二人は顔を合わせる。
始業前の会議が終わると、千冬が書類を整理しているところに蓮が寄ってきた。
「土曜日は楽しかったですね、織斑先生。水着姿はとっても素敵でしたよ」
「蓮さ……ゴホン!句折賀先生こそ、素敵でした
」
周りに他の教師もいるのでお互い敬語だが、千冬の蓮を見る目は、ハートマークが見えるほどに愛情のこもったものだった。
そんな二人を、山田麻耶がからかう。
「ラブラブですね~
」
「~~~~~~ッッ////」
「あれっ?」
からかうなと怒られると思っていたので、まさか恥じらうとは麻耶にも意外だった。
「そろそろ私も授業に行かなくては。句折賀先生、し、失礼しますっ」
そそくさと立ち去ろうとする千冬が横切ろうとしたところに、蓮が山田にも聞こえないくらい小さい声でボソッとつぶやく。
「放課後に消灯したらあの水着を着て玄関前に来い」
「……!」
それを聞いた千冬はさらに顔を赤くして俯いたままその場を後にした。
――――
放課後になると、命令通り彼女は消灯後の廊下へとやってきた。
海で着なかった黒の方を着てきたようだ。
「これをつけるんですか?」
「そう。今日はお前をペットにしてあげようと思ってね。御主人様と牝犬って設定でさ。面白そうでしょ?」
「御主人様と……牝犬……それは楽しそうですね
」
学園内で首輪を付けられ、犬の様に散歩させられる。
もはやその姿に尊厳など無く、本当に牝犬そのものだった。
心の全てを埋め尽くすほど蓮への愛で支配された千冬本人の倫理観は既に瓦解していて、正常な判断などもはやできなくなっていた。
そんな二人の関係はしばらく続き、変化が起きたのは1ヶ月が経った頃だ。
蓮に千冬が告白したのだ。
というのも、蓮は千冬にフェラチオや変態行為はさせるがそこまでで、一向に抱く気配が無かった。
千冬はいつでもOKだったし、蓮も自分が拒まないと知っていて手を出していないと気付いていた。
それでいてもたってもいられなくなり、告白に踏み切ったのだ。
そんな千冬一世一代の告白に蓮の返事はあっさりとしていた。
「うーん、俺は対等の付き合いって無理なんだよね」
「ど、どういう意味ですかっ」
「つまりさ、お前が俺の牝奴隷になるっていうんだったら、御主人様として付き合ってやってもいい。だけど普通の彼氏彼女だったら面倒くさいから嫌なんだよね」
「私が牝奴隷になるなら……」
「お前だってそうだろ?俺と対等の付き合いをするより、俺の命令に従い、尽くす付き合い方の方が良いだろ?」
「そ、それは……」
わずかに目を背ける千冬を、さらに追い詰める。
「なんだ、まだ葛藤してんのかよ。迷ってるなら命令してやろうか?俺の牝奴隷になれ……ってさ」
「うっ……」
「言われたら断らないだろ?だったら自分の意志で牝奴隷になったほうがスッキリすると思うけどな。だってそうだろ?御主人様に命令を促すなんて牝奴隷としちゃ一生の汚点だもんな」
そう言われた千冬は決心し、全てを捧げて牝奴隷にしてもらうことを懇願する。
服を脱ぎ捨て全裸になり、土下座して頭を床にこすりつける。
「どうかこの織斑千冬を、句折賀蓮様の牝奴隷にしてくださいっ。私の御主人様になってくださいっ」
何もかもを投げ捨て、牝奴隷になることを懇願した千冬を蓮は受け入れ、この日をもって人間から牝奴隷となった。
身も心も捧げ、完全支配された生活は千冬にとってこれ以上ない幸せをもたらすことになる。
それから2か月―――
ブブブブブブブッ
ウィイイーーーーン
ブルブルブルブルブルッ
ヴィンヴィンヴィンッ
ジュボジュボジュッ
IS学園の一室にはたくさん機械音が鳴り響いていた。
「ひゃあああんっ、こ、これ刺激が強すぎるよっ
」
「くぅんんっ、あっあああっ」
「こうして御主人様に頂いたローターでオマンコの入り口を刺激していると、感じちゃいますわぁ
」
「セシリアッ、私達は処女なんだっんんっ
処女膜を破らないように気をっ
はぁはぁっ、つけるんんん~~~ッッ
」
「ああんんっ、んんんっ
」
特別教室では、学園内から選りすぐられた10数人程度の生徒が各々支給されたローターやバイブを使ってマンコをほぐしていた。
なぜこんなことをしているかというと、彼女たちは今日、全員が処女を捧げる日だからだ。
「イクッ、イキますわっ、んあああ~~~~
」
絶頂し、十分にアソコがほぐれた生徒から順に校門に向かう。
そこである男が帰ってくるのを待つのだ。
『『『おかえりなさいませ!御主人様っ
』』』
美女たちに出迎えられ、帰ってきた男は句折賀蓮だった。
3週間の出張から、この日帰ってきたのだ。
「みんなでお出迎えご苦労さん」
「御主人様が御留守の間に学園関係者の洗脳支配率は100%になりました。もはやこの学園は御主人様の物となっております」
「頑張ったな。お前の弟はどうしてるんだ?」
「あのクズも洗脳して虐げられる生活を普通のことと受け入れております」
「お望みの寝取りハーレム処女エッチのために、いつでも元の意識に戻せるようになってますよ
」
「よしよし。それじゃあシャワーを浴びたらさっそく始めるとするか!準備しておけよ」
「かしこまりました
」
この後、正常に戻された一夏の目の前で寝取られハーレムエッチが繰り広げられることになるのだった―――
男の名前は句折賀 蓮(くおりが れん)
28歳で、前職や経歴は不明だ。
ISの適性も無く、教師と言ってもその担当するところは一般教養であり、主に数学や化学だ。
新任にもかかわらず、学園理事のお墨付きで主任の肩書を得ている。
それだけなら良かったのだが、彼はいろんな部署に首を突っ込んでは、口を出すので、現職の教師達からの煙たがられていた。
特に反発を態度に出したのは、織斑千冬だった。
ISにも乗れない男に、指導方針に口を出されるのは彼女にとっては屈辱だったし、その内容も的外れだったからだ。
今日もまた、廊下で二人は口論となっていた。
「お言葉ですが句折賀先生。その様なカリキュラムを取り入れるのは容認しかねますが」
「まぁそう邪険にしないでさ。私は私なりに考えて……」
そんな言葉にもまるで取合わず、千冬は鋭い眼光で拒絶の言葉を投げつける
「ISの適性の無い人間に、訓練方法に口を出す資格は無いと言っているのです。……わかりませんか?」
「うっ……。わ、わかりました。織斑先生の言う通りですね」
このように、千冬はISの訓練内容への口出しには特に怒る。
まるで隠そうともしない露骨な圧力に、蓮も引き下がらざるを得ない。
「また喧嘩されたんですか?」
千冬が去った後でため息を付いていると、廊下を通りかかった山田が声を掛けてきた。
「いや喧嘩ってことは……」
千冬のキツイ態度は男に対して共通のものなのかとも思ったが、山田曰くどうやら弟にはだいぶ甘い様だ。
しかし、これまで何度か廊下から授業風景を覗いたことがあるが、とてもそうは思えない。
千冬は、弟である一夏に対しても厳しく接しているのは明らかだったからだ。
それでも山田は良く見てるとわかると言うので、少し長い時間足を止めて授業を見ていると、確かに違いがわかった。
確かに叱りはするが、その後の表情は穏やかで、自分に向けられるような怒気はまったく感じられない。
「どうでした?」
「確かに弟に対しては甘い感じだった……」
「私が思うに、織斑先生の一夏くんに対する感情は、それ以上に思えます」
「それ以上?」
「うーん、言葉での説明は難しいんですけど、なんというか……一人の異性として意識しているように思います」
「なるほど……そういうことか」
それでピンと来た蓮は、薄ら笑いを浮かべて山田に命令した。
「面白いことを思いついた。彼女を例の部屋に呼び出せ。弟の方は私が呼び出そう」
「御主人様の仰せのままに……

―――
―――
「なんだ、織斑もきていたのか」
「句折賀先生に呼び出されたんだ」
「句折賀先生に?」
二人は学園にいくつかある機材保管庫のうちの1つに呼び出されていた。
この部屋は今現在はあまり物がおかれていないが、損傷した機材などを置くこともあるので、かなり分厚い壁で囲まれている。
呼び出された経緯もあり、千冬は何か嫌な物を感じたが、それを察したところで既に手遅れだった。
「こ、これは!?」
突如として部屋に噴き出してきたガスは、即効性の睡眠ガスであり、それを吸った二人は昏 睡してしまう。
二人が眠った後、部屋に現れたのは当然のごとく蓮と山田だった。
昏 睡状態の二人は別室へと移され、そこにある椅子に座らされる。
そして四肢を拘束された上で、バイザー付のヘッドギアを被らせられている。
脳に刺激を与えて、人格を書き換えてしまう洗脳装置だ。
後はスイッチを入れれば織斑姉弟は洗脳装置の意のままである。
「洗脳内容はどのようにされるのですか」
「織斑先生にはこれから私と接する度に嫌悪感を抱くようにインプットする。徹底的に嫌われるつもりだ」
「嫌われる……ですか?」
「あぁ。そして弟に対してはこれまで以上に愛情を感じさせるつもりだ。何をしても愛おしく思い、どんどん好きにさせる。それだけじゃない、彼女の恋愛理念を書き換え、愛する男へはとにかく従順に尽くすという性質にする。それこそ好きな男の言葉ならどんなことでもいいなりになるほどにな」
「ふふっ、御主人様の考えがわかってきました。一夏くんには天国と地獄を味わってもらうことになりそうですね……

「その通りだ。もちろんそれまでの期間も違う方向で楽しませてもらうがな」
こうして洗脳装置によって織斑姉弟は脳を書き換えられた。
これまでと変わらないIS学園の日常。しかし二人には大きな変化が起きていた。
千冬の一夏への態度は明らかに軟化し、目に見えて優しくなった。
誰が見ても異性と意識しているとわかるくらい、露骨な変化だ。
一夏の方も、姉である千冬を意識しているそぶりを見せている。
逆に蓮に対してはこれまで以上に態度が冷たくなり、高圧的な態度をとるようになった。
肩書上は上司ある蓮を、まるでゴミを見るかのような目で見る。
そんなある日、蓮は千冬の部屋に呼び出されていた。
呼び出された蓮は床に正座させられ、千冬は椅子に座って足を組んで見下ろしている。
「今日呼び出された理由はわかっているでしょう?」
「いや全然……。部下である織斑先生の前で正座させられる心当たりなんて私にはありませんね」
「……これだからあなたという人は。いいですか!今日はあなたの教育方針は間違っていると教える為に呼び出したのです」
「そうですか。時に織斑先生、胸を晒して恥ずかしくは無いんですか?」
「は?上司に対して説教をする時は胸をさらけ出すのは当然でしょう?IS学園の主任教師ともあろうに、そんなことも知らないのですかっ」
彼女はいたって真面目に言うが、その常識が洗脳装置で植え付けられたものだとはまるで思っていない。
蓮はニヤつきそうになるのを必死にこらえ話を聞いていくと、生徒の気持ちを考えた教育が必要ということを言いたいようだ。
「生徒の気持ちを考えろと言いますけど、織斑先生自身も今は教師の身分じゃないですか。本当に生徒の気持ちを理解できているんですか?」
「そ、それは……もちろんです」
ちょっと屁理屈を言われただけで言葉に詰まるのは、彼女の思考が正常じゃないからに他ならないが、
千冬は至極まっとうな正論をぶつけられたと感じてしまっている。
「しかしまぁ、織斑先生の仰りたいことは理解できました。生徒の気持ちを理解する……大切なことですね。良いでしょう、では特別に今から日付が変わるまで織斑先生を私の生徒にしてあげましょう」
「私が句折賀先生の生徒?」
「そうです。短い時間でも私の生徒になれば気持ちも理解できるでしょう」
千冬は嫌悪している蓮の生徒になるのはとても嫌だったが、言われたことに対し反論することがまったくできずに渋々それを了承してしまう。
こうして日付が変わるまでという約束で、千冬は蓮の生徒となった。
「それでは織斑、制服に着替えたら私の部屋に来なさい」
「……ッ。わかりました……句折賀先生」
―――
10分後、蓮の部屋をノックしたのは千冬だった。
IS学園の制服を着ている彼女は、いつもの凛々しさが抜けてかなり若く見えた。
「私の部屋から誰にも見つからずにここまで来るのは大変だったんですよ」
「そうか。それはスマンな。では時間も限られていることだし、さっそくお前に教育をしてやろう」
「……何をするんですか」
「今日お前に教えるのは、性についてだ。いわゆる性教育をお前に施してやろう」
それには千冬も激しい嫌悪感と反抗心を見せたが、教師には絶対服従という思考が働き、結局それを受け入れてしまう。
「まずは織斑の性知識を確認する必要がある。思いつくところで良いから、知っている限りの知識を言ってみなさい」
千冬は顔を真っ赤にしながら知っている性知識を言葉にしていくが、本人の恥ずかしがりように対し、その内容はいたって普通だった。
普通すぎてつまらないので、蓮は途中で割って入りオナニーを普段どのようにしているかの質問に切り替えた。
すると今度は予想以上に興味深い内容のを話しを聞くことができた。
「オナニーの仕方もいたって普通だな。ちなみにどういったモノをオカズにしているんだ?」
「そ、そんなことまで答えなければならないのですか!?」
「性教育をするのには知る必要があるだろう。織斑ならそれくらいわかってくれると思ったが」
「それは……その通りです」
「わかってくれればいい。では答えてくれるね」
数秒の沈黙の後、諦めの表情を見せてから千冬はオカズについて語り始める。
「最近は……弟の一夏の事を思いながら……オナニーしています」
「ほう!織斑はよりにもよって実の弟をオカズにしてるのかっ」
一夏に対する好意を増幅するように洗脳しはしたが、まさかこれほど短期間で実の弟をオカズにするようになるとは思っていなかったので、蓮にとっても驚きだった。
(想像以上のペースで愛情が膨らんでいるな……。ちょっと調整しておくか)
「織斑が弟をオカズにオナニーをする変態だということは良くわかった。だが―――」
「私は変態などでは……!」
「いいから聞きなさい。変態なのはわかった。だが―――安心しなさい。変態を普通に矯正するのも教師の役割。今日の性教育はオナニーについてにすることにしよう」
「オナニーについて……」
蓮はまず、オナニーの仕方としてクリトリスを重点的に弄るように説明した。
これは彼女のクリトリスを開発する手間を省くためで、敏感に育てすぐイケるようにするのが目的だった。
もちろん、いずれ蓮が千冬を抱くときに激しくイカせるのにも役に立つ。
さらに指導はオカズの内容にも及んだ。
「一夏に見られながら句折賀先生に犯されるところを想像……ですか」
「そう。弟に抱かれる想像でオナニーするのは健全じゃない。しかしそれほど好意を寄せている弟を完全に除外するのも、精神衛生上よくない」
「だから今後は私に犯されるところを想像してオナニーしなさい」
「……わかりました」
返事こそ素直にするものの、やはりその表情は納得がいかないようだ。
そこでもうひと押し説明を付け加える。
「女は男に屈服することで真の快楽を得られるんだ。服従し、尽くすことでしか幸せを得られない。君もそうだ」
「服従し。尽くすことでしか幸せを得られない……」
(悔しいがその通りかもしれない……今まで気付かなかったが、この人の言うことは真実に思える。これほど嫌っている男の言葉なのに心に染み込むようだ)
既に洗脳済みの千冬は様々な書き換えをされているが、蓮に対しては主に接すれば接するほど嫌悪感が増幅されるようにされた。
もちろん危害を加えることは無いように制御を施されているが、それに加えてどんなに嫌悪感が募っても、蓮の言葉を受け入れる様にされてしまっている。
恋愛観も男に尽くすように変更されているが、それに加えて服従によってでしか真の幸せを得られないようになってしまった。
当然このまま彼女への指導が終わりになるはずも無く、実践に移ることになった。
「私の言った通りの想像をしながら全力で取り組むこと。そして絶頂する時は迷わずイクと言う事。いいね」
「わかりました」
スカートとパンツを脱がせ、ベッドの上で開脚させると既に若干濡れていた。
多分、蓮を呼び出す前に一夏と接しているときに濡れたままだったのだろう。
「ん……ぁ……ああんっ……」
指導内容にそって、これまでのやり方からクリトリス主体のオナニーを実践する。
まだ開発されていないこともあって、快感を得てはいるものの絶頂するほどではないようだ。
(あぁ……やめれくれ句折賀先生……私の処女が……一夏に捧げたかった処女が奪われる……)
「くぅ……んあっ、ああっ」
蓮に犯されるという想像をしながら、熱心にクリトリスを弄り続けると気持ちも高ぶってきたのか、声を多く漏らすようになった。
「あああっ、ダメッ……!あああんっ、イ、イクッ、イクゥウウウ~~~~!!」
ビクンビクンと絶頂で痙攣する千冬は、それまで見たことのないくらい溶けきった表情をしていた。
「良し。ちゃんとイケたようだな。今後も今日の指導内容に基づいてオナニーに励むことだな」
「はぁはぁ……わかりました……句折賀先生……」
「よろしい!これにて今日の臨時教育を終了とする。服装を整えた後、自室に戻って良し」
「はい……御指導いただき……ありがとうございました……」
それからというもの、千冬は指導内容の通りオナニーするようになった。
(いちかぁ……今日はお前の前で犯されて……中出し受精させられちゃったよぉ……

回数を重ねる毎にどんどん千冬の想像はエスカレートしていき、最近では一夏の前で犯されたあげくアヘ顔をさらして屈服してしまうなんてことまで考えていた。
そんな生活が続いた2週間後、千冬は5連休の前半を利用して一夏と海に面した旅館に一泊二日の旅行に来ていた。
もちろん箒やセシリア達もついて来たが、千冬は一夏のことしか頭になかった。
「どうだ?」
「どうって?」
「私の水着はどうかと聞いているんだ!」
「お、お前がこういう水着が好きだと言うからわざわざ買ってきたんだ。感想くらい言うのが礼儀だぞ」
「ごめんごめん。とっても似合ってるよ。その……綺麗だ」
「そ、そうか……

この段階では相当に愛情が膨らんでいるので、もはや一夏に対する恋愛感情を隠そうともしない。
宿泊先の部屋割にしても、立場を利用した強権を発動して一夏との相部屋を手にするなど、やり過ぎなところもあるくらいだ。
そんな姉の変化に鈍感な一夏も気付いていた。
最近は頼めば断られないし、前だったら絶対断られるような雑用でも引き受けてくれる。
厳しかった指導も甘くなっている。
それを肌で感じていた。
それを除いても、雰囲気そのものもまるで変わっていた。
―――
「いやぁ~、弟と飲む酒は美味いっ」
「千冬姉、あんまり飲みすぎると二日酔いになるぞ」
「私はこの程度で潰れたりはしない。ホラ、お前も飲め飲め

酒が入ったことでさらに気を良くしている姿を見て、一夏はちょっと冗談染みたことを言ってみることにした。
本来の一夏なら冗談でも絶対に言わないようなことをだ。
「千冬姉、ちょっとお願いなんだけど……俺の足を舐めてくれない?」
「なっ!?」
動揺する千冬に冗談だと取り繕うとしたが、数秒の沈黙の後に千冬は無言で立上り一夏の傍へと寄った。
怒られると思ったが、彼女は膝をついて土下座の態勢を取り、そして一夏の足の指を舐めはじめた。
「ぺろぺろっ……

「千冬姉……!」
指を舐める千冬は、自分の中で湧き上がる感情に戸惑いと喜びを感じていた。
(あぁ、句折賀先生の言った通りだ。一夏に服従し、尽くすのがこれほど幸せだなんて……あぁ、私はもう逆らえない……愛する人……一夏に……)
目の前であの千冬が自分の足を舐めている。
その光景に一夏も興奮して勃起していた。
彼もまた冷静な判断力を失い、さらに過激な要求をしてしまう。
「俺とセックスしてくれって言ったら……千冬姉はどうする?」
「!!」
お前が望むなら仕方ないと言葉は嫌そうだが満面の笑みで体を開こうとする千冬。
本当にことに及びそうだったので冗談冗談と取り繕うと、露骨に残念そうだ。
(私は構わないのに……同室では火照りを解消することもできないし……困った)
そう思う千冬をよそに、一夏は別の事を考えていた。
(なんていうか完全に俺にベタ惚れって感じだな。もう何を言っても俺の命令通りに……命令通りに……)
そう確信したとき、一夏の思考に変化が置き、千冬に言う。
「ちょっと散歩してきなよ。酔いが醒めたら戻ってきて」
「あ、あぁそうだな。そうするよ……」
散歩に出た千冬はやり過ぎたかと反省し、部屋に戻ったら謝ろうと思った。
1時間ほど歩くと酔いが醒めてきたので部屋に戻ったが、待っていた一夏はどこか虚ろな目をしていた。
「一夏、さっきはその……」
謝ろうとした矢先、一夏は被せる様に言葉を放った。
「ネコ耳コンニャク」
「――――!」
それを聞いた千冬は瞬く間に目の光を失い、催眠状態に陥ってしまった。
「千冬姉、あなたは私の質問にはなんでも正直に答えます。いいですね」
「はい……一夏の質問には……なんでも正直に答えます……」
一夏は自分に対して千冬がどんな感情を抱いているかを質問した。
すると予想通りこれ以上ないほどに大きな愛情を抱いることがわかった。
「一夏の為なら……一夏の言う事ならなんでも聞いてあげたい……従いたい……愛しているから……」
「わかりました。ではもう1つ質問します。あなたは句折賀蓮先生のことをどう思っていますか」
「句折賀先生……」
この質問に対しても予想通りの答えだった。
激しい嫌悪感を抱き、見た目から話し方を含めたあらゆる振る舞い、服装や歩き方など何から何まで嫌っていた。
彼の何が嫌いというより、彼だから全てが嫌い―――
それは視界に入っただけで苛立ちが込み上げるほどマイナスの感情だった。
「わかりました」
実の弟である一夏への大きな愛、
上司である蓮への憎悪
それを細かく聞き出した一夏は、催眠状態の千冬に暗示を与えた。
「あなたは私が3つ数えて手を叩くと、催眠状態から目を覚ますことができます」
「目が覚めたら、明日の準備を整えて就寝します」
「そして朝起きると、あなたが織斑一夏に抱いている感情と、句折賀先生に抱いている感情がそっくりそのまま入れ替わっています」
「朝起きると……一夏への感情と……句折賀先生への感情……入れ替わって……」
その暗示をかけたとき、千冬は虚ろな瞳のまま悲しそうな表情になった。
一夏への愛情が憎い男と入れ替わってしまうことを本能的に拒絶していたのだろう。
だがそれはつまり彼女が暗示の内容をちゃんと理解していることの証明に他ならなかった。
「必ずそうなります。あなたへの暗示はこれで終わりです。3……2……1……」
パンッ
「―――ん?」
手を叩いたことで千冬は催眠状態から目を覚ました。
同時に一夏の瞳にも光が戻り、本来の彼に戻っていた。
「今日は一夏との時間を作れて楽しかったよ。明日の準備をして、今日はもう寝ようか」
「まだ10時だよ。それにこの後セシリアの部屋にみんなで集まる予定なんだ、千冬姉も来るって言ってたじゃないか」
「それは……そのつもりだったがなんとなく今日はもう寝た方が良い気がするんだ。悪いが一夏だけで行ってくれ」
「そっか。じゃあみんなには千冬姉は酔いつぶれたって言っておくよ」
「もうちょっと気の利いた言い回しがあるだろうっ」
「はははっ。じゃあ行ってくる、おやすみ。千冬姉」
「あんまり夜更かししすぎるなよ。……おやすみ

千冬はとても穏やかで優しく、愛情に満ちた笑顔で一夏を見送る。
それは千冬から一夏に向けられる最後の笑顔だった―――
―――翌日
「織斑、飲み物を買ってこい。全員分だ」
「ええっ、またかよ。大体俺1人じゃ持ちきれないよ」
「うるさい、つべこべ言わずに行って来い!」
「わ、わかったよ」
朝、目を覚ました千冬にはさっそく変化が置きていた。
昨晩まであれほど愛情に満ちた態度をとっていたのにもかかわらず、途端に厳しくあたるようになったのだ。
まるで一夏を視界に入れたくないかのような態度で、ことあるごとに一夏を遠ざけようとする。
一夏もこの変化には戸惑うしかなかった。
旅行2日目の午前中は、みんなでビーチバレーをすることになった。
「えーと次は、私と一夏さんチームと織斑先生&篠ノ之さんチームの対戦ですわね」
「頼むぞセシリア」
「頑張りましょうね、一夏さんっ

「それじゃあ対戦を始めるよっ。まずは織斑先生チームのサーブからね」
「あぁ、わかった。―――はああああああっ!」
「えっ――――」
千冬渾身のサーブが一夏を襲い、頭部を直撃した。
その衝撃で一夏はしばらく気を失ってしまうほどだった。
こうした事件もあり、この旅行は微妙な空気のまま終わりをつげることになった。
千冬の態度には、箒をはじめとする生徒たちも動揺せざる負えなかった。
一夏は連休の後半に自宅に戻って休んでいた。
すると最終日に千冬がやってきた。
自分の私物を回収しにきたという彼女はやはり別人のように冷たい空気を纏っていた。
「お前の目につくところに私物を置いておきたくないんでな。残りの物は全て処分しておけ、お前に触られた物などもはや不要だ」
「千冬姉……」
わずか数分で必要な物だけを手に取り、辛辣な言葉を残して彼女は去って行った。
取り残された一夏は、何が原因で態度が急変したのか全く心当たりがなかったこともあり、どうすることもできなかった。
連休が終わり、学園に戻っても千冬はそのままだった。
いやむしろ悪化しているとさえ思えた。
「織斑、お前にはこの本を全て覚えておくように言ったはずだが……?」
「そ、そんなこと言ったって1日じゃいくらなんでも無理……」
「言い訳はいい!」
「いいか皆よく聞け。本来なら入学前に全て覚えておかなくてはならないことをこの男はいまだに覚えていない。このようなクズと一緒になりたくなかったら与えられたカリキュラムは滞りなく遂行することだ!」
授業でも一夏を激しく叱り、さらし者にして怒鳴るようになったのだ。
どうにかして変化の理由を聞き出そうと接触を試みても、千冬が取合わないのでどうすることもできない。
ただうな垂れることしかできなかった。
そんな落ち込んでいるところを、励ましたのはセシリアだった。
「わ、私でしたら一夏さんを励ましてさしあげてもよくってよ。私に出来ることでしたらなんでもしてさしあげますわ」
気遣うセシリアに対して一夏が返した言葉は、およそ変態的な内容だった。
「……じゃあ俺の尻の穴を舐めてって言ったらしてくれるの?」
「!?」
「……一夏さんがそう命じられるのでしたら」
「セシリア……俺のことをそこまで……」
「犬の尻尾が付いた炊飯ジャー」
「え――――」
一夏に対して態度を急変させた千冬は、一方で蓮に対しての態度も変化していた。
近寄ることすら避けていた蓮のデスクに来たと思ったら、なんとコーヒーを差し出したのだ。
「これは?」
「コーヒーです。その……喉が渇いているかと思いまして」
「……ありがとう。織斑先生は気が利くんですね」
「えっ、あっ、ええと……べ、別に普通のことをしたまでです」
お礼を言われて顔を真っ赤にする千冬はとても嬉しそうだった。
主任室は個室なので他に誰もいないが、もし他の教師がその光景を見たなら驚いたことだろう。
ともかく一夏と自分への感情が入れ替わったことは明らかだった。
そんな千冬にいじわるをして見たくなった蓮は、彼女の持ってきたコーヒーには手をつけなかった。
「気持ちはありがたいんですが、今はお茶を飲みたい気分なんです。廊下の自販機で買ってきてもらえませんか?」
「えっ、も、申し訳ありませんっ。お茶ですね、買ってきます」
差し入れたコーヒーを気分じゃないからと手を付けず、あまつさえ持ってきた本人にお茶を買いに行かせるなど失礼極まりない話だ。
怒るべきところなのだが、千冬はむしろそれを察することができなかったことを反省していた。
「お金はあげなくてもいいよね?お茶も千冬先生のおごりってことで」
さらには奢れなどと失礼な言動を被せる。
それでも千冬は怒ることは無かった。
「え?あ、はい。お金はいらない……いりません」
彼女にとってこの言葉は、怒るよりもむしろ喜ぶ要素が多かったからだ。
「このお茶だな」
自販機でお茶を買いつつ、さっき言われた言葉に笑みを浮かべていた。
(千冬先生のおごり―――千冬先生―――千冬……)
「ふふっ

名字ではなく下の名前で呼ばれたことに喜んでいたのだ。
もっと言えば、150円のお茶と言えどもそれを貢ぐ形になるのも嬉しかった。
タメ口を使われたことにしても、違和感どころか親近感を感じていたので、まるで怒る要素にならなかったのだ。
意気揚々とお茶を持って蓮の部屋に行くと、千冬にとって予想外の誘いが待っていた。
「ところで千冬先生。明後日の土曜日、二人でビーチにデートね♪」
「ええっ!?わ、私と句折賀先生で……ですか?」
「そうそう。ちょうど土曜は俺も休み取れそうだからさ」
嬉しい誘いにまたも顔を真っ赤にして狼狽える。
今まであれだけ邪険にしてきた自分のことをデートに誘うなんてどういうつもりなんだろう―――
ひょっとして好意を持ってくれているのか、など色々な思考がよぎっていた。
いずれにせよデート自体は千冬も行きたいと思ったが、土曜日は先約が入ってしまっていた。
それもとても重要な用事で、よほどのことでなければキャンセルするわけにはいかない。
「その、とても嬉しいお誘いですが……あいにく土曜日は予定が……」
とても申し訳なさそうに断ろうとしたが、言い終える前に蓮が言葉を被せてきた。
「俺の誘いを断るの?」
「……!!」
蓮の表情は笑顔だが言葉は重く、千冬の全身を貫く様に響いた。
(私の予定なんていっさい無視しする強引さ……逆らえない……違うな。この人には逆らいたくない……私の魂がそう言っている。あぁ、私は……

「……わかりました。私で良ければデートに付きあわせて頂きます

こうして大切な用事があるにもかかわらず、デートを承諾してしまったのだった。
千冬が部屋を出ていこうとした時、蓮が呼びとめる。
「あぁそれと、俺は水着は卑猥なのが好きなんだよね」
「え?」
「二度は言なわないよ。それじゃあ明後日を楽しみにしてるね」
「卑猥な……水着……」
(この私に卑猥な水着を……あぁ……

言葉の意味を理解した千冬は、その日のうちに水着を買いに行くのだった。
そして土曜日―――
「ど、どうでしょうか」
「おー!見えそうで見えない乳首、布面積に対してちゃんと処理された陰毛。いい感じに卑猥だね。いいねいいね!」
「あ、ありがとうございますっ

親子連れを含むたくさんの人でにぎわう海水浴場で、布面積の少ない彼女の水着は場違いといえるものだった。
どんな水着を買うかは相当悩んだようで、色も黒と紫を二着買い結局こっちを着ることにしたらしい。
悩んで買った水着を褒められて、かなり喜んでいた。
「せっかくのデートだし、お前って呼んでいい?」
「んなっ!?そ、その、構いませんが……」
「カップル感が出ていいでしょ♪お前も俺のことは蓮様って呼んでよ」
「さ、様ですかっ」
「いいじゃない。今時珍しい男尊女卑カップルって設定でさ

ウインクをしながらそう言われては、千冬に拒否する感情など湧きはしなかった。
「わかりました。蓮様……

(あぁ……蓮様……なんてしっくりくる呼び方なんだ。今日だけじゃなく、これからもずっとそう呼びたいくらいだ

ここまで来ると、もう千冬はいいなりだった。
海に入り、頭から下が見えなくなったところで体を弄ってもなされるがままだった。
水着をずらして直接胸を揉んだりしても、抵抗するそぶりすら見せず、体を委ねてくる。
それでも岩陰に隠れて裸にし、フェラチオをさせようとするとさすがに抵抗があったようだ。
付き合ってもいないのに性行為は、と反抗したのだ。
だがそんな抵抗も一瞬でしかなかった。
「付き合ってなくちゃフェラしちゃいけないってルールでもあるの?ま、お前が嫌だっていうんなら別にしなくてもいいけど」
突き放すそぶりを見せると、すぐに言葉を撤回してフェラチオを受け入れたのだ。
「い、いえっ。フェラチオします……」
「します?」
「……!さ、させてください。蓮様のオチンチンに、私のお口で御奉仕させてください……」
「そうそう。男尊女卑カップルなんだから俺の言うことはなんでも従わなくちゃね」
「わひゃりまひた……

千冬はこうして服従し奉仕することへの喜びと、尽くすことで得られる幸福感に酔いしれていた。
そして口内射精され、命令通り飲みこんだとき、蓮を愛していると完全に自覚したのだった。
月曜日になり、学園で二人は顔を合わせる。
始業前の会議が終わると、千冬が書類を整理しているところに蓮が寄ってきた。
「土曜日は楽しかったですね、織斑先生。水着姿はとっても素敵でしたよ」
「蓮さ……ゴホン!句折賀先生こそ、素敵でした

周りに他の教師もいるのでお互い敬語だが、千冬の蓮を見る目は、ハートマークが見えるほどに愛情のこもったものだった。
そんな二人を、山田麻耶がからかう。
「ラブラブですね~

「~~~~~~ッッ////」
「あれっ?」
からかうなと怒られると思っていたので、まさか恥じらうとは麻耶にも意外だった。
「そろそろ私も授業に行かなくては。句折賀先生、し、失礼しますっ」
そそくさと立ち去ろうとする千冬が横切ろうとしたところに、蓮が山田にも聞こえないくらい小さい声でボソッとつぶやく。
「放課後に消灯したらあの水着を着て玄関前に来い」
「……!」
それを聞いた千冬はさらに顔を赤くして俯いたままその場を後にした。
――――
放課後になると、命令通り彼女は消灯後の廊下へとやってきた。
海で着なかった黒の方を着てきたようだ。
「これをつけるんですか?」
「そう。今日はお前をペットにしてあげようと思ってね。御主人様と牝犬って設定でさ。面白そうでしょ?」
「御主人様と……牝犬……それは楽しそうですね

学園内で首輪を付けられ、犬の様に散歩させられる。
もはやその姿に尊厳など無く、本当に牝犬そのものだった。
心の全てを埋め尽くすほど蓮への愛で支配された千冬本人の倫理観は既に瓦解していて、正常な判断などもはやできなくなっていた。
そんな二人の関係はしばらく続き、変化が起きたのは1ヶ月が経った頃だ。
蓮に千冬が告白したのだ。
というのも、蓮は千冬にフェラチオや変態行為はさせるがそこまでで、一向に抱く気配が無かった。
千冬はいつでもOKだったし、蓮も自分が拒まないと知っていて手を出していないと気付いていた。
それでいてもたってもいられなくなり、告白に踏み切ったのだ。
そんな千冬一世一代の告白に蓮の返事はあっさりとしていた。
「うーん、俺は対等の付き合いって無理なんだよね」
「ど、どういう意味ですかっ」
「つまりさ、お前が俺の牝奴隷になるっていうんだったら、御主人様として付き合ってやってもいい。だけど普通の彼氏彼女だったら面倒くさいから嫌なんだよね」
「私が牝奴隷になるなら……」
「お前だってそうだろ?俺と対等の付き合いをするより、俺の命令に従い、尽くす付き合い方の方が良いだろ?」
「そ、それは……」
わずかに目を背ける千冬を、さらに追い詰める。
「なんだ、まだ葛藤してんのかよ。迷ってるなら命令してやろうか?俺の牝奴隷になれ……ってさ」
「うっ……」
「言われたら断らないだろ?だったら自分の意志で牝奴隷になったほうがスッキリすると思うけどな。だってそうだろ?御主人様に命令を促すなんて牝奴隷としちゃ一生の汚点だもんな」
そう言われた千冬は決心し、全てを捧げて牝奴隷にしてもらうことを懇願する。
服を脱ぎ捨て全裸になり、土下座して頭を床にこすりつける。
「どうかこの織斑千冬を、句折賀蓮様の牝奴隷にしてくださいっ。私の御主人様になってくださいっ」
何もかもを投げ捨て、牝奴隷になることを懇願した千冬を蓮は受け入れ、この日をもって人間から牝奴隷となった。
身も心も捧げ、完全支配された生活は千冬にとってこれ以上ない幸せをもたらすことになる。
それから2か月―――
ブブブブブブブッ
ウィイイーーーーン
ブルブルブルブルブルッ
ヴィンヴィンヴィンッ
ジュボジュボジュッ
IS学園の一室にはたくさん機械音が鳴り響いていた。
「ひゃあああんっ、こ、これ刺激が強すぎるよっ

「くぅんんっ、あっあああっ」
「こうして御主人様に頂いたローターでオマンコの入り口を刺激していると、感じちゃいますわぁ

「セシリアッ、私達は処女なんだっんんっ



「ああんんっ、んんんっ

特別教室では、学園内から選りすぐられた10数人程度の生徒が各々支給されたローターやバイブを使ってマンコをほぐしていた。
なぜこんなことをしているかというと、彼女たちは今日、全員が処女を捧げる日だからだ。
「イクッ、イキますわっ、んあああ~~~~

絶頂し、十分にアソコがほぐれた生徒から順に校門に向かう。
そこである男が帰ってくるのを待つのだ。
『『『おかえりなさいませ!御主人様っ

美女たちに出迎えられ、帰ってきた男は句折賀蓮だった。
3週間の出張から、この日帰ってきたのだ。
「みんなでお出迎えご苦労さん」
「御主人様が御留守の間に学園関係者の洗脳支配率は100%になりました。もはやこの学園は御主人様の物となっております」
「頑張ったな。お前の弟はどうしてるんだ?」
「あのクズも洗脳して虐げられる生活を普通のことと受け入れております」
「お望みの寝取りハーレム処女エッチのために、いつでも元の意識に戻せるようになってますよ

「よしよし。それじゃあシャワーを浴びたらさっそく始めるとするか!準備しておけよ」
「かしこまりました

この後、正常に戻された一夏の目の前で寝取られハーレムエッチが繰り広げられることになるのだった―――
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